クレジオとサルガドのサハラ

北海道とは思えないほどのうだるような暑さと、まるで梅雨のようなじめじめした日が入れ替わり訪れる。
映画祭が終わってからも相変わらず忙しく、作品の制作期限も迫っていて、日を追うごとに胃の奥に嫌な感じが広がってゆくのを感じる。

眠る前に開く本は相変わらずクレジオの「砂漠」。疲れていると読書のペースは遅い。無理にペースを上げるとイメージが意識からすり抜けてしまうので、ペースを落してでも丁寧に読むように心がけている。

物語の中で描かれているサハラの情景が少しずつ馴染んでくるにつれて、自分が、どこかで見た誰かの写真のイメージを参照しながらその小説の世界に浸っていることに気づき、ふと考える。
その源泉となっていたのはセバスチャン・サルガドの写真だった。彼の写真がアフリカやサハラの人々の生活を題材にしていたことは微かに記憶にあったけれど、改めて調べてみると、「砂漠」で物語の主体として描かれているサハラの民・ベルベル族も、サルガドの被写体となっていた。

クレジオがテキストで織り上げるサハラのイメージ(それは写真の連続性と映画の持続性を兼ね備えた、類い稀な描写力によって齎されるもの)。そしてサルガドの、まるで宗教画のような、時として過剰とも思えるほどの絵画的写真(その姿勢に賛否両論あるにせよ、高次の写真表現であることは間違いない)。
クレジオのエクリチュールには時間の変遷や、持続する意識の流れがあり、サルガドの写真には静止した瞬間から広がる永遠性と永続性がある。

双方の表現は意識の違う角度から、ともに強い普遍性と浸透力をもって、旅を知らない僕の中に、ゆっくりと世界のイメージを築き上げてゆく。


Akiyoshi Kitagawa on the web
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by akiyoshi0511 | 2010-07-18 13:51 | monologue

映像作家・写真家 北川陽稔 http://www.akiyoshikitagawa.com/


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