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usu-nupri / hemoi-tomari

年内最後のフィルム現像が届いたので、早速スキャンする。今回は10月から11月中旬に撮影したシートフィルム4枚。一回の撮影で作れるネガは物理的に最大二枚。
この非効率性(心身の現在地点と撮影行為の不一致)と、非即時性(生活時間と露光時間の最大限の段差)もまた、欠かす事の出来ない要素なのだ、と思う。
自分の心身の状況と無関係に、レンズは巨視的な時間と向き会っている。撮影者はただただ、視界が暗転するまでの30分を(蚊と戦い、熊の気配に畏れながら)、ただただ待っているだけ。

有珠山のシリーズは、来年度もこのまま撮り続けるか、今の枚数で見切りをつけるか悩むところ。シリーズを構成する上でのパーツは揃っているが、単体のシリーズで考えると、もう少し続けたいなという思いもある。

そして泊村のシリーズは、同じシリーズのこれまでのロケーションと大きく趣が異なる画像に仕上がっている。そもそもシチュエーションが海辺であること。また、周囲が開けていることで、日没〜全闇までの色合いの変化が山間部とは異なり、より青系に傾いたネガに仕上がってくるのだが、理由はどうもそれだけではなさそうだ。

波打ち際の切り立った岩壁を写した写真も、水面の向こうに三機の原子炉を臨む一枚も、画面には独特の静けさと、物々しさが漂っている。被写体それ自体の印象は、これまでの3つのシチュエーション(遺棄された採石場/地蔵の並ぶ里山/活火山の山麓)に比して、曖昧なものが多いはずなのだが、写真としては、なぜか一枚の印象がとても強い。
映っているものが不可解であることが画面に奥行きを与えているのかもしれないし、それ以上の何かが、そこで再現されているのかもしれない。

いずれにしてもこれで、#1〜#4で30枚程度の展示を構成できるまでには至った。

3月22日から目黒のギャラリーコスモスで個展が決まったので、その展示には、このシリーズの#1(前述の採石場)から15枚程度を、全倍くらいの比較的大判のプリントで展示する予定でいる。


Akiyoshi Kitagawa on the web
http://www.visual-activist.com/akiyoshikitagawa/index.html
by akiyoshi0511 | 2010-12-25 22:37 | monologue