TMX_0111

T京現像所で試写を観るために待合室にいて、ふと壁にかけてあった一葉のプリントが目に留まった。苔むしたどこかの里山、橙色に紅葉した木々の隙間にお堂がこじんまりと収まっている、スクエアの画面。

飾られていた他の写真は例えばスローシャッターで捉えられた沢や、広角レンズでパースペクティブを誇張した風景など、仰々しい有り体の美意識を感じさせて逆にほとんど重みを欠いていたが、その写真だけは妙にリアリティがあり、潔い輝きを放っていた。まるでその場に居合わせたかのような、樹皮の芳香や手触りや、晩秋の冴えた空気を伝えるような、体験そのものに果てしなく近い写真。おそらくは撮り手さえも意図していない、認識の零度をさまよう「決定的瞬間」がそこには体現されていた。

ときどき、予期せずそういう写真に出会う。
ここのところ映像のことばかり考えていたけれど、一気に写真の世界に引き戻された気がした。

「世界は美しい」とか「美しい国」などと寒々しく口にする輩が多いようだけれど、本当に世界が美しいと思える瞬間なんて稀だ。
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by akiyoshi0511 | 2007-01-11 23:02 | monologue

映像作家・写真家 北川陽稔 http://www.akiyoshikitagawa.com/


by Akiyoshi Kitagawa

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