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イメージフォーラムで「いのちの食べ方(Our Daily Foods)」を観た。宮崎淳氏の「Borderland」や「FRONTIER」をここで目を潤ませながら観てから、もう何年経つのか。
一巡して、また元の位置にいる。…違う。以前にはなかった視点を獲得した訳ではないが、一点透視ではない、並走する同時代の現実と向き合い、そして今ここにいるのだった。

「いのちの食べかた」はノンダイアローグで淡々と進行する映像作品。明らかにドキュメンタリーというよりはアートフィルムの文法であり、いつか観たジェームスベニング(だったか?)に近い即物的着眼。冒頭15分のシークエンスは洗練の極みであり、観る者を圧倒すると同時に我々の置かれた現実をまざまざと見せつけられる。食に限った現実ではなく、未来化した我々の「全的な現実そのもの」を、だ。完璧な、完膚なきまでに潔癖な死がそこにある。詳しくは後日仕事のレビュー記事で書く予定だが、即物的視線の正当性と、宿命的に含まれる危険性をやはり強く感じた。

これが現実だから、という言い口には半ば強制的な懐柔が含まれている。そしてこの作家はおそらく、やむを得ぬ懐柔の先にあるものを視ている。立ち位置は、わたしたちとほとんど同じだ。

・・・

翌日は下北沢で「カメラになった男」を観た。今回はこれをどうしても観たかった。多くの資料から明らかになっている情報がほとんどではあるが、沖縄のシンポジウムでのやり取りなどは実際に映像で観るとそれなりに凄まじい。内容が、というよりは主催者や観客を巻き込んだ人間模様が凄まじいのである。内容はもはや語るべくもない。
そもそも我々の世代には語りようがない事物だけに、あなたの生きる現実に基づいて十全に考えて行動(撮影)しなさい、ということは痛いほど伝わってくる。これも老獪と呼ぶべきか。

少なくとも数年前に公開された同題材の映画よりは100倍価値がある。そちらの映画はいわば取り上げた当人と、そのファン層のための意義しかない映画だった。それでも、被写体となっている中平氏はその思惑よりも遥かに強かで逞しいと当時微かに感じたが、今回の正当なドキュメントを見て、それが見当違いではなかったことをあらためて認識した。

前述の「Our Daily Foods」を引き合いに出して語れば、同じ即物的視線、全的視野であっても立ち位置はいわば真逆である。その補足として言えば、前者が「食」のグローバリゼーションに対して単純に否定的な見地で本作を撮影したとは、どう考えても思えないのだ。仮にそうなら、こうした撮影も実現し得ないだろう。
即物的視座においては対象の絞り込みが大きな意味をもつ。中平氏の横浜と、選び撮られた事物(…否定を貫くため…)に比すれば、「Our Daily Foods」の選び取った対象(…肯定も含まれる…)が孕むものもまた、同次元において炙り出されてくる。

・・・

羽田で飛行機を待っている間にフロイトの「幻想の未来/文化への不満」を少し高いと思いながらも買う。フロイトでこういう政治的に直接的な言説というのは、今までは読んだことがなかった。軽く読み始めたが「夢判断」よりも遥かに読み応えがある。包括的な最後期の著作だからというのもあるが、何よりもフロイトが精神分析論の体系を宗教/国家論や政治論、そして人間そのものへの啓蒙に結びつけるアクチュアリティに、やはり惹かれる。
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by akiyoshi0511 | 2008-01-22 04:00 | monologue

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