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Two Sanctuaries

テスト段階ではあるものの、勇払原野での撮影をはじめました。最終のプリントを考えてネガフィルムを使うべきか否か、まだ悩んでいるし、作品全体の向かう先も、今のところ不鮮明ではありますが。

これまでに何度か書いてきたように、このチトセ・ウトナイ地区の街区や原野は、自分にとって特別な場所なのです。おそらくこの国でもっとも殺風景な場所のひとつですが、ここには自分にとって必要なものが、ひとしきり揃っているように思えます。

それだけのことかもしれませんが、仮にそれだけであったとしても、現在の自分が繰り返し赴くとこが出来、尚かつ信じるに能う被写体(場所)は、ここの他にそれほど多くあるわけではない。ですから、まずはなにかが見えはじめるまで撮影を重ねます。
撮り始める前からコンセプトを持つのではなく、いくつかの手懸りをもとに、撮影を続ける中から明確なものを導き出して行くというやり方は、昨年から続けている都市部の撮影と同じアプローチです。

タルコフスキー映画の風景に酷似した原野。しかしここには「ストーカー」の世界のような未知の希望もなければ、ロシア的な、人間についての問答もありません。人が立ち入ることのない湿地や原生林があり、その原野を取り囲むようにして、閑散とした工業団地や、新興住宅地が広がっています。

しかし突出した要素がないわけでもありません。この地区ではふたつの聖域が隣り合っています。ひとつは野鳥たちの営巣地であり、もうひとつは日本の保有する軍隊の駐屯地です。片や地球のための聖域であり、片や日本国家のための立ち入り禁止区域です。

原野のただ中で出会う白鳥は丁度良い撮影の伴侶です。一方の、耳を劈くF15の轟音も、あるいは「必要不可欠なもの」のひとつと言えるのかもしれません。ただのユートピア的風景ではなく、ただならぬ状況におかれた瀬戸際の風景として、この場所はあります。
そして、今はその是非を問うのではなく、ただこの状況に繰り返し身を置いてみたいと考えています。

8月、仕事の合間を縫って集中的に撮影を行うことになるでしょう。

・・・

今週末は再び東京滞在となります。
by akiyoshi0511 | 2008-07-17 08:24 | dialogue