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【追想】 "annoski"(2010)の撮影メモから

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「トゥイェ・ピラ」(豊平川上流・藻南公園付近・"annoski"の起点)

雲間から時おり光が射す午後、市の中心部を流れるT川の上流を、M公園のあたりから下流に向かい歩いていた。
やがて下流へと続く視野の片隅に水煙が現れ、その場所を目指して下ってゆくと、忽然と、圧倒されるほどの大瀑布が現れる。

この一帯は札幌南部の市街地に位置するが、昔から「石山」と呼ばれ石の産地でもあり、都市河川としては想像し難い岩礁の地形に、滝や大淵が見られる。滝の落差は5メートルほど。流量は膨大で、淵の底は見えない。恐らく場所によっては水深5メートル以上はあるだろう。かつては「おいらん淵」とも呼ばれ、世を儚んだ花魁が身投げした場所でもあったのだと過去に何かの本で読んだことがある。確かに、飛び込めば(あるいは足を滑らせて落ちれば)ひとたまりもないような淵ではある。

この日はどちらかというと、20年ほど昔の記憶を頼りに、ほんの気晴らしのつもりでその場所を訪れたのだ。淵も滝も昔見たそのままだった。(ふと「20年」と書いてみて、そんな時間の段差が自分にも生じたのだと思うと、少し不思議な気がする)。
都心にこのような景観が見られる都市が、果たして国内において他にあるだろうかなどと考えつつ歩いていると、不意に、その瀑布の遥か向こうに一棟の大きなマンションが目に入り、流れや岩肌との強いコントラストに目を奪われた。
眼前には、まるで箱庭にアメリカ西部の光景を再現したかのような荒削りな景観が広がっている。春の午後の残照が、その岩盤を柔らかく、立体的に照らし出していた。西部開拓と北海道開拓をなぞらえて見ればそれもアイロニカルなものだが、その向こうに、まるで楼閣のように一棟の団地が佇んでいる。さらに下流側を見渡せば国道沿いに生協の看板や、密集した街区が見渡せた。想像を絶するというものではない、けれど奇妙な光景だった。

改めてカメラを携え構図を考えてゆく。丁度滝の下流側からそのマンションを見やると、まるで滝上にマンションが浮いているかのように見えるポジションを見つけた。これは確かに、想像力の範疇を越えた景観に思えた。

想定している意味から、何かが「はみ出て」いるのだ。
それで、この場所でひとつの仕事が成立すると確信を持つ。

季節、光、天候、あるいはそれ以外の偶発的な何か。諸条件を鑑みれば、すぐにこの撮影を完了することはできそうにない。また、然るべき時節を待てば良いというものでもなく、折りをみて何度か来ることになるだろう。撮るなら早朝が良いかもしれない。

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by akiyoshi0511 | 2017-12-09 02:20 | old text

2006.10.20

地下鉄の線路というのは幼い頃から自分にとって、何か過去と未来を繋ぐ異空間のようなものなのだった。過去には未来の予兆として見ていて、その未来の直中にいたっては過去としてすべてが認識される、というような、過去でもあり未来でもある(しかも建造物としてはつねに現在形で眼前にある)、時間をチューブ状にしてメビウスの輪にしたもの…。今年の夏札幌に帰った時、数年ぶりに見た地下鉄のシェルターを撮った。子どもの頃地下鉄が好きで、最前列の座席に立ち何度も往復して景色を凝視していたが、20年経って今度はカメラを携えて乗りこみ、レンズを通して凝視していた。幼い頃に自分が感じていた時空の恍惚をベンヤミンの認識に照らしてあらためて実感した、と書いたら言い過ぎと言われそうだが、いずれにしてもその場所の写真はまだ撮り足りない気がする。
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by akiyoshi0511 | 2007-11-29 03:08 | old text

映像作家・写真家 北川陽稔 http://www.akiyoshikitagawa.com/


by Akiyoshi Kitagawa

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