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Rachmaninov

神保町の古い喫茶店で、ウトナイのシリーズのための序文を書き起こしていると、ラフマニノフのピアノコンチェルトがジャズピアノで流れていた。原曲のフレーズが分からない程くだけた演奏ながら、時折それと分かる優美で伸びやかなモチーフが耳に飛び込んでくる。他ならぬこの曲が、夏を前にやや足踏みしていた自分の背中を、力強く原野に押し出してくれたのだ。
ひとしきり夏の撮影を終えて、そのシリーズのための序文を書いている今、再びこの曲が聴けたことは幸福な偶然だった。

現状でもプリントは40枚程になりそうだ。「memeNT」にはその序文と、10枚ほどの主立った写真を紹介するつもりでいる。このシリーズは最終的に全倍プリント80枚位のボリュームになる見込みであり、来年の展示を最終の目標にしている。

このウトナイのシリーズをはじめ、ウェブマガジンのための原稿もある程度蓄積してきた。そこにはメンバー各人の、進行中のシリーズを紹介するページを設けている。他のメンバーも今、蓼科の別宅に籠ったり、都内で仕事に追われながら、それぞれの写真のための言葉を書き起こしている。
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by akiyoshi0511 | 2008-08-27 10:33 | dialogue

夏の夜

2日間、のべ15時間くらいミーティング。その後、新宿に出て未現像フィルムをラボに送った。北海道を出る2日前に撮影した、夏のウトナイ最後の10ロール。

日暮れの驟雨で先刻までの暑さは和らいでいた。晩夏の空気と一ヶ月振りの新宿の喧噪は心地よく、VAの仲間と夕食を食べて別れてから、しばらくどこへ向かうでもなく街を歩いていた。

蒲田に戻りVAのU氏と各々の写真を批評し合う。北海道の撮影から戻ったばかりのせいか、彼の捉える首都外縁の光景が新鮮に、かつ非常にアクチュアルな情景に感じられた。彼の目にもやはり、僕のフィールドは鮮烈なものに映っただろう。鋭角的でもそうでなくとも、どちらでも良いのだが、少なくともVAの写真表現の原動力であり本質は、対象とのある種の摩擦や衝突による発熱と放熱であり、その姿勢は十全に共有しているように思えた。

VAのウェブマガジン「memeNT」の立ち上げまで既にそれほど時間的猶予はなく、各自の仕事もそれなりの段階に来ている。
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by akiyoshi0511 | 2008-08-22 11:06 | dialogue

けだし現実

20日から東京滞在、それがひと月に渡る見込みのため、こちらでの夏の撮影を何とか終わらせておかねばと思い、ここ数日は随分と無理をしてきた。仕事のやりとり以外は何事をも意に介さず、罪も矛盾も辞さず…と書けば美しいものの、現実は要するに、かなり不甲斐ない状況を背にしていた、ということ。諸般の不安を撥ね除けて、一日でも、一枚でも撮影をと思い、実行してきた。

この撮影のために中古で買った旧式のハッセルに(それでも数本分の仕事のギャラが飛ぶ、一式数十万の代物)、短期間でこれだけの撮影枚数を課すのもどうかとは思っていたが、案の状、撮影可能日数が残り二日となった日曜の16時半(つまり、この撮影に最適な時間帯)、以前から時折不安定だった機構に問題が生じて撮影は強制終了。9月後半にも追加撮影は考えているけれど、北海道の秋は駆け足…可能な撮影は限られているだろう。それに、秋は秋で予定している地域の撮影がある。

タイミングの良すぎる故障に消沈しつつ一度札幌に戻り(それでもよくここまでノントラブルでいてくれた、という気持ちの方が強い)、月曜にいつもお世話になっている札幌の中古機材屋に駆け込んだところ、札幌でハッセルを扱える職人を紹介してくれた。カメラはその日の午後に無事再稼働し、天気は薄曇りでいまひとつだったものの、最終日の撮影を何とか2時間くらい、実行できた。

・・・

とにかく、目の前には気配に満ちたウトナイの原野があった。これは、確かな手応えをもって自分が触れることのできる「正真正銘の現実」だった。
札幌という地方都市が遠目に眺める彼岸であるとするなら、ウトナイの原野は、最後に自分に残された現実そのものであり、同時にその突破口でもある。要は、全体を粉砕するために部分を捉える、ということだが、写真がそのまままに自分の姿勢を物語るかは分からないし、そのままだから成功だという訳でもないだろう。
少なくとも、自己に前向きな意思や確たる感触を与えてくれるのは、去年から札幌郊外で緩やかに撮り重ねて来たラージフォーマットの写真ではなく、ウトナイ・勇払原野で、他の物事をすべて心の埒外において無心に切るシャッターの感触なのだと、この撮影を始めてから気付いた…気がする。

その原野ともしばしの別れ。明日からはむせ返る東京の熱気の中で、映像仕事の方でも一段階自分を脱皮させるべく努力を重ねる。
ビールも飲みたいし、5月以来の長期滞在なので、会いたい人間もそれなりにいる。
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by akiyoshi0511 | 2008-08-19 01:59 | monologue

撮影してます

先週は天候が安定していたので、のべ4日間、車中泊でウトナイ周辺に滞在して撮影を繰り返した。4日間でブローニーフィルム20数ロール、250枚余を撮影。撮影枚数を抑えることは自分にとって重要命題のひとつだが、今回はこれが必要最低限度の枚数と言える。

土曜日は別のシリーズのために、札幌市北東部を流れるS川と、石狩川周辺を撮影。大判を8枚、こちらは成果のほどはともかく、撮影後、薄暮のなか悠々と河畔の草原を走る馬を眺めたり、傷ついた鳶(とんび)を見知らぬ人たちとともに助けたり(鳶は動物病院へ搬送された)、北海道らしい時間だった。

月曜、昨日のフィルムを出しがてら現像上がりのブローニーフィルムを受取りに行こうかと思ったが、仕上がりは明日だった。いよいよウトナイ撮影の「本番」第一段が上がってくるが、技術面を含めて諸処の心配はある。言い換えれば、操作の面倒な古めかしいハッセルで、ポジフィルムでの撮影をこれだけ集中的に繰り返すと、嫌が応にも状況対応能力は向上してゆく。自分の限界をじりじりと押し広げている感覚が、確かにあるのだった。

月曜午後は再び千歳に入り、空港直下のP川の撮影。先月まで数度に渡り、体長2メートルの羆が目撃されているとの情報があったので、釣具店で熊よけの鈴とホイッスルを買う。1カットおきにホイッスルを鳴らしながら、数ロールを撮影。数百匹の羽虫の群れに追われて断念した滑走路の再終端は、もう一度行って撮影せねばならないだろう。
とにかく、この一年で目ぼしをつけたものは全て納得のいく状況で撮りきるまで、繰り返し歩く。そのための一年だったし、この夏を逃せば、もうこれを仕上げる機会はないだろう。

・・・

帰宅後、VAのホームページを整理。ギャラリーページに映像作品を載せました。
http://www.visual-activist.com/
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by akiyoshi0511 | 2008-08-12 10:54 | dialogue

【Visual Activist N43】 サイト公開


http://www.visual-activist.com/

上記サイトギャラリーページにて、数枚ですが新作の一部も公開しています。
ぜひ一度ご覧ください。

北川 陽稔
ak@visual-activist.com
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by akiyoshi0511 | 2008-08-04 10:45 | dialogue

Eureka!

ウトナイ・勇払原野のシリーズのタイトルと、作品の分類と、それぞれの主題が、やっと見えた。

じりじりと悩み続けて、やっと開ける。いつもそうだがここまでが苦しい。それまでの自己の認識を越える強いアウラに引きつけられながらも、それを自分なりにアウトプットする方法が見出せない状態が続いた。昨夏から数10回に渡って現地を訪れてきた。何度も作品の行方が解らなくなり、接点を見失い、迷走した果てに、他ならぬ自分が「何のために」その作業を完遂するのかが、やっと明確になる。
映画の頃から毎回、この繰り返しだ。

今回は単体のシークエンス写真ではなく、前回目指したような映画的ナラティブもない。そしてルポルタージュに限定されたものでもなく、無論、空想の風景を作為的に描いたものでもない。すべての主題と体験が絡み合い、緩やかにその「土地全体」を織りなすような作品…となるはず。

飽くことなく観続けてきたタルコフスキー映画に潜む「永遠への郷愁」。そして「ロシアの自然を想う交響曲を書こう」という意思に支えられ、亡命先での苦境から立ち上がったラフマニノフの旋律…東京にいた頃から愛着を持っていたものからも、あらためて大きな手懸りを得た。
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by akiyoshi0511 | 2008-08-02 21:06 | monologue

映像作家・写真家 北川陽稔 http://www.akiyoshikitagawa.com/


by Akiyoshi Kitagawa

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