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2013.10.1

10日ぶりに札幌の作業場に戻った。ドアを開ける前から猫が激しく自分を呼んでいることに気付く。3、4日の出張でも戻るとそんな感じだけれど、10日ぶりとなると猫の方もちょっと気違いじみている。こちらとしても猫にはとても会いたかったので、嬉しい再会。これからほぼ毎月、こういうことが繰り返されるのだろう。

9月に札幌で結婚し、ほぼ同時に東京にも部屋を借りた。仕事上の拠点がどうしても必要な時期になったから。今年は年明けからほとんど無休に近い状態でクライアント仕事をしていて、今もその延長上にいる。札幌と東京、半々で動けるのが自分としては心地良いけれど、毎月のようにホテルを予約するのも億劫なので、部屋を借りることにした。ホテルに泊まる値段とほとんど変わらない家賃なので安いものだ。
部屋は多摩川付近の神奈川県側にある。奇しくも15年ほど前、始めて上京した時に住んだ場所にも近い。引っ越し早々、東京の写真家の知人たちと多摩川の河原で営業している居酒屋で飲んだ。相変わらず猫や犬がいた。

敢えて15年ないし5年前と同じサイクルに身を置いてみて、ひとまず正解だったとは思う。ある種の新鮮な気持ちを維持して東京に関わりながら、その感覚を札幌に持ち帰ることを繰り返す。仕事上のコストを考えても効率が良くて、自分自身の中で何かが滞留してしまうことも防げる。
週末は山梨・奥多摩で撮影をした。最近は土地の物語ではなく、地勢や地質が自分の作品と結びついている。某かの民間伝承を手掛かりにする訳ではないから、もうこの狭い日本の中で北も南も関係ないと思うようになった。その代わり、文字通りの地層に目を向けている。これからは、数百年・数千年の時間の層、あるいは地球の深層が露呈している場所で撮影をしていくことになるだろう。

それにしても、15年前と今では世界も自分も状況が変わり過ぎた。当時は9.11も起きていなかったし、放射能も前提にしなくて良かったし、自分は20歳だったし、こうして日記を書くことにさえ一定の重みを見出すことができた。
拡大に向かう螺旋なのか、その逆なのかは分からないけれど、一度しかない人生で東京に二度目ないし三度目の必然性を感じたからここにいる、ただそれだけだ。厳密に言えば完全に離れていた訳ではないので、少し中途半端だったものを正しい形に戻しただけ。「ちょっと3年くらい山の中で写真を撮ってました。作品ができたので戻ってきました」そんなところなのかもしれない。
5年前、家の危急な事情で東京を離れた頃、僕はあんなにも世界を視ていたはずなのに、実のところ引き蘢りに近い状態だったのかもしれない。冷静に振り返れば手詰まりも感じていたことは否めない。

先週はスーザン・ソンタグの関連書を読んだ。20代の頃に読むべき本だったが、当時の僕はこれに変わる数人の著作を繰り返し読んでいた(ここは簡単にまとめられないけれど、それ故に引き蘢らざるを得なかったのだ)。いずれにしても既に終わってしまったものだが、これからも間接的に抱え込んでいくものでもある。かつてはそこに直接性を求めていたが、今はより深層から某かの表現を引き出そうとしている。そこだけが少し異なっている。
by akiyoshi0511 | 2013-10-02 07:09 | monologue