2005.10.21

最近読んだ本
・「あさま山荘1972上巻」
・「連合赤軍事件を読む年表」
・トーマス・マン「ブッデンブローク家の人々」

 上の2冊は既に読んでいるが、資料として再読。「ブッデンブローグ」はまだ読み始めたばかり。ちなみに先に書いた「はじまりの時」は最後の数章を放置したまま中断している。明日あたり読み終えそうではあるものの、やっぱりクレジオの本の中ではイマイチ手応えがなかった。言い過ぎかもしれないが、最近の村上春樹を読んでる時の違和感に近い感触(これは翻訳の印象によるのかもしれないが)。

 「はじまりの時」は過去と現在を併記することで歴史への接続を試みてはいるものの、やはり当事者たる現代を生きる主人公の姿勢が研ぎ澄まされていないことには、不十分なアクセスに終始してしまう。世界をボンヤリ旅する者にはボンヤリとした光しか見えない。例え文体と構成の妙で丁寧に過去に触手をのばしても、それが主人公の内面を媒介にして現在進行形で再発見されるか、あるいは書き手の鳥瞰的な視線を媒介にして外在的に強く現代に結びつけられるか、どちらかの核が求められるのだろう。結節の強度を高めることの難しさ、そして問題の現在性/継続性を問うことの難しさ…。上記の「連赤年表」の序文にもお約束のように記載されているが、その過去と現在の関係を物語ることの難しさを、未だに私たちは突きつけられている。ワイドショー的に言うところの『連赤事件とオウムは酷似している』という段階に終始してしまえば、何一つ明るみになることはない。またその論理/道理の消滅それ自体に居直ったような表現にも、やはり何一つ救い出すことはできない、と思う。問題は、同時代の終焉以来『何が失われて何が強度を増したのか』ということであり、それによって現代というものがどのように演出されているのか、という内実にあるのではないだろうか。嘗てのように全てを一時に明るみにすることはできないのなら、世界の諸要素において、それぞれの分野に精通した者がしぶとく構造を明るみにし、いわば『論理のゲリラ戦』を展開する以外に方法はない。

 そういう意味では嘗ての村上春樹の、「ねじ巻き鳥クロニクル」は奇怪な説得力があったように思う。全てのモチーフを仔細に読んでいけばいくほどに、多くの結びつきを見出すことができ、またひとつひとつの結びつきにおいて、緻密に計算された上で、不確定部分や曖昧さが導入されていたことで、結果的に『対象を強引に名付けることなく世界の矛盾を突く』という妙技に至っていた。この研ぎ澄まされた多面性は、当時の村上春樹に突出していた要素だったように思う。『世界の終わり』で一度選択された無抵抗の先にあるものが、確かに提示されていた。

 最近のクレジオの良さというのはやはり、海や空と肉体の一体感による、無条件に受け入れられる永遠と幸福の感覚…にあるような気がする。もしかしたらそれくらいしか、もう救いは残されていないのではないか。「偶然」の、船の上のナシマの姿は、読後随分経っても色褪せることがないし、インディオの青年の嗚咽は、深き森に今も響き続けているように感じられる。

 さて、週末からはしばらく本を読む時間もない。
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by akiyoshi0511 | 2005-10-21 20:30

映像作家・写真家 北川陽稔 http://www.akiyoshikitagawa.com/


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