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写真の内と外の闇の共鳴

これまで何ら違和感も疎外感も持たずに生活していた人々でさえ、否応なく、生と死という「彼岸と此岸」の双方に意識を向ける。
言い換えれば、此岸のみに目を向け、金儲けと享楽の追求だけが求められてきた高度経済成長以後の数十年は、そもそも人間にとって異常な精神状態であり、その異常さを影で支えてきたもののひとつが、原子力産業ということでもある。

原子炉がメルトダウンし、生と死のグレイゾーンが現実として立ち現れた時、私たちはやっと享楽の支配(強迫観念)から醒めたのだろうか。
あまりにも過酷な状況だが、これはある種の目覚めのプロセスでもあるのかもしれない。生き残った(あるいは、今のところ生きている)私たちには、相応の試練と、社会の見直しが求められてゆく。

二年前から僕は、闇の写真を、それも完全な闇ではなく薄暮の闇を撮り続けている。これは、白昼のもとにある全包囲的な現実が、闇の訪れとともに、わたしたちの文明以前の記憶を想起させる別の次元へと移ろう、その「眠り=目覚め」を記録する試みだ。
必然的な流れで、昨年の秋にはそのシリーズの中で泊原発も被写体にしているが、現在の状況を見ていると、まるで自分が写真を通して描いてきた黙示録が、現実のものとして立ち現れているかのようにも感じられる。

光の終わりと、闇の始まり。
過剰なネオンが消え去った区々、この淡い薄暮のような闇の訪れは、わたしたちが畏怖や敬いの心を取り戻す契機となるのだろうか。
それともわたしたちは、これほどの出来事を経験しながらも自省することさえ放棄し、人間それ自体の終末に向かってさらに歩みを進めるのか。

そして、やはり自分は、「状況全体を視る」しかないのだと痛感する。災害直後から自分にできることを考えたが、それはカメラを持って現地に赴くことではなく、カメラを放棄して現地に支援に出向くことでもないのだと感じた。どちらも、僕の身に余る行為という気がした。
せめてもの具体的な救援のアクションとして、余力のない生活ではあるが、ひと月の間募金活動を続けた。

現在の状況や、来るべき世界の在り方を、適切な言葉で物語ることのできる人は、この世界に自分以外にたくさんいるだろう。
拙い言葉で世界のビジョンを物語るよりも、昨年から続けて来たこのシリーズ、「誰のものでもない場所」を闇の力を借りて描き出す行為を、差し当たり継続すべきと思っている。

また、『写真家として』この災害へのリアクションを何か行う、ということは、今のところ考えていない。あるいは数年後には取材に赴くかもしれない。けれど、少なくとも僕の撮影行為は、時局に対するリアクションとして何かを行うには向いていないと思っているし、ましてそれを善行として位置づけることなど、断じてできない。それは、作品それ自体のためにもできないことだ、と思う。

昨日、午前中の校務を終えてから、職場を抜け出して何人かの先達のスタジオやお世話になっているプロラボを回った。ただただ、信に能う人たちと対話がしたかった。
今の自分があり、世界の今があるが、周囲の人々は今なにを考えているのだろうか、という思いが明確にあった訳ではないれれど、おそらくはそれもあったのだろう。
考える時間などという贅沢なものは失ってしまったが、僕は辛うじて作品制作を継続しながら、自分が、そして世界が立ち入りつつあるこの「真実の闇」を己の目と肌で感じてはいるようだ。そして、それを再び写真のネガに還元する、あらたな技法を探しはじめている。


Akiyoshi Kitagawa on the web
http://www.visual-activist.com/akiyoshikitagawa
by akiyoshi0511 | 2011-05-07 10:50 | monologue

昨日の夕方は恵庭近郊で撮影した。20分露光。無事に写っていれば今年度二枚目のネガ。やはり快晴の日の薄暮は色がいい。

今日は雨なので午前中は布団の中で読書。久しぶりに読む日本の小説は読みやすくて時間を忘れる。そして一気に読み終えた後で、楽しんでいる間に自分自身は相応の時間を失っていることに気づく。感覚が剥き出しのまま取り残されて落ち着かない。
日常生活にふと立ち現れる感覚と、小説の中で物語られる感性の共鳴。本来はそれが読書の醍醐味で、もっとも幸福な時間でもあったのだけれど、いつの頃からかこの共鳴は少々つらいものになってしまった。理由を考えたくはないけれど。

それにしても、好きな読書に時間を割けるのは事実上GWと年末年始だけという、今の仕事の辛さ…久しぶりに未読の本が3冊以上たまってしまった。


Akiyoshi Kitagawa on the web
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by akiyoshi0511 | 2011-05-04 13:57 | monologue

夕闇の撮影を再開する

土曜日に今年の撮影を始めた。
薄暮の中、30分かけてネガを一枚露光。この積み重ねだ。

昨年のように一カ所に集中的に通うことはできなくなくので、別のアプローチで、同じ結論に至るようなプロセスを試している。遅かれ早かれこのやり方に切り替えるつもりでいたこともあり、とくに問題はなさそうだった。

一方でこの連休、上記の撮影も含めてやらねばならない作業は山ほどあるのに、会いたい人がたくさんいたはずなのに、仕事上の悩みを引き摺ってしまい、すっかり心が硬直している。

気分転換ではなく、根本から気持ちを転換せねばならないと思う。
間違いなく追いつめられた状況だが、光を見出せるか。

朝から青山監督の「EUREKA」のラストを観た。
by akiyoshi0511 | 2011-05-02 09:58 | monologue